古美術という病にかかって
私が古美術や古民芸に興味を持ったのにはいくつかの条件があったのだと思う。今思い返すと①生まれ育った家の近くに何軒かの和建築があり、こんな家に住んでみたいなあと思っていたこと。②小さい頃から絵を描いたり、物を作ったりが好きで美術の道へ進んだこと。③家は父が教師をしており、5人の子どもを養うには余り裕福ではなく、良い物、本物を持ちたいという気持ちが強かった。④そんな中で切手、古銭、金魚、サボテンなどの趣味を、少ない小遣いとアルバイトをして楽しんでいた。この時に、より良い物を持ちたいという欲?が強まったと思われる。⑤職に就き、福知山で下宿をしていた時にお世話になった先生の家が、和建築で室礼も良く気持ちよく迎えていただいた。この先生の影響を受けることになった。先生について古美術店を見て回るうちに、自分も気に入る物を2、3点使ってみたいなあと思い始めた。これが病の始まりである。
私は酒が好きな方で、毎晩少々ではあるが欠かしたことはない。盃ぐらいは気に入る物、愛用で使える物をと小降りの蕎麦猪口を買う。それが手に入ると古い壺を眺めて飲めばいっそう酒がうまいかもとまた一つと増えていった。数点集まると、自分で古美術店を回りいろいろと買ってきた。それを先生に見せると「良いもんだ」「安く買えたねえ」と褒められ、もうブレーキはきかなくなった。
3年間の下宿生活を終えて京都に戻ってきたが、同じ職場のKさんに紹介してもらったT古美術店を知ってから本格的な趣味となった。T古美術店の主人は当時まだ若かったが、やる気満々で目が利き、良い品を安く仕入れてきて分けてくれた。品物を買うというより「店を買う」「信用を買う」というつもりで通い、だから欲しい物がサラリーでも買えたし良い品が集まってきた。
こうして、陶磁器、木製品、布、紙製品、ガラス製品など広い分野の物が集まった。あらためてこれらの見所を鑑賞し、生活への生かし方を考えまとめてみたい。