用の美
「用の美」とは、必要があって作り出され、心のこもった技術と美意識、そのうえ丈夫で使いやすいもの、しかも自然な材質は心も和みいつまでも愛用して使えるもの。これらが用から生まれた美「用の美」ではなかろうか。
一例に盆を取り上げると、ひと昔前まで欅や栃のくり抜きに漆を塗ったもの、四方盆に根来塗りをしたものなど、何年何百年と飽きることなく使われてきた。使うほどに味わいも出てくる。焼き物でも古伊万里や京焼など実に丁寧に作られ、どんな料理を盛りつけても食欲が増す思いがする。六古窯を中心とした土物も、眺めるだけで心が落ち着くが、花を生けたり傘立てに使ったりすればしっくりと生活にとけ込んでくる。
古き時代に使われていた物を見てみると、家、家具、日用品等どれをとっても自然の素材を使い、一つ一つ心を込めて作られている。長い歴史の中で、その時代その時代にもっとも良いと思う物が生み出され、地域や時代に生かされながら受け継がれてきた物である。